前回の記事で2020年2月末に発売されたフジミ模型艦NEXTシリーズの新商品である1/700球磨型軽巡洋艦:多摩(たま)についてキットレビューしました.
この多摩に続き,姉妹艦かつ球磨型軽巡洋艦のネームシップである球磨(くま)も同時期に発売されています.
本記事では筆者がフジミ艦NEXTシリーズの球磨型軽巡洋艦:球磨(くま)&多摩(たま)を2隻同時に製作し,具体的な製作方法やコツ,失敗や苦労した部分を解説していきます.
したがって,
- 艦NEXTシリーズの球磨型軽巡洋艦って何?
- 初心者でも組立できる?
- 駆逐艦より少し大きい戦艦プラモデルも作ってみたい!
といった方の参考になるのではないかと思います.
前半は「艦NEXTシリーズや球磨と多摩について」、後半は「球磨と多摩の製作について」となっています.
本記事の結論
- 球磨:組立シンプル&搭載機付き
- 多摩:対空兵器満載で見栄え抜群
- 軽巡洋艦なので戦艦・空母よりもサイズがコンパクトでパーツ数も少ない
- 色分けや組立易さは
艦NEXTシリーズとは?
艦NEXTシリーズとはフジミ模型から発売されている塗装不要の戦艦プラモデル(艦船模型)シリーズのことです.
- 接着剤のいらないスナップフィット
- 塗装のいらない着色済み成形パーツ
- リアルシールによる細部の色分け
といった特徴を持っており,まさにガンプラの戦艦版です.
したがって,戦艦プラモデル初心者の方の入門キットとして最もオススメしたい商品シリーズとなっています.
作り方は着色成型済みのパーツをはめ込んでいくだけなので,接着剤や塗装が不要で他メーカーの戦艦プラモデル(艦船模型)と比べ手軽に製作することが可能です.
フジミ模型の艦NEXTシリーズについて詳しく知りたい方や入門キットを探している方はこちらの記事もぜひ参考にしてみてください.
軽巡洋艦の多摩(たま)と球磨(くま)について解説
軽巡洋艦(けいじゅんようかん)と言われてもよく分からないという方,いらっしゃるのではないでしょうか?
かく言う筆者も軽巡洋艦について説明してくださいと言われたら
「重巡洋艦と駆逐艦の間くらいの軍艦ですかね(-_-;)」
くらいの知識しかありません…
でも,艦NEXTシリーズの球磨・多摩キットなら,軽巡洋艦について知らなくても全く問題ありません.
なぜなら…
艦NEXTのキットには艦歴の解説書が付属するからです.
かなり詳細に説明されており,球磨・多摩に関する基本的な知識はもちろんのこと,軽巡洋艦の役割などについても学ぶことが出来ます.
ここでは筆者の見解も入れつつ簡単に要約したいと思います.
軽巡洋艦の役割
軽巡洋艦とは高速な駆逐艦で構成される水雷戦隊,潜水戦隊の旗艦(きかん)を勤めるのに最も適した軍艦.
他にも索敵,哨戒,主力部隊護衛など様々な任務で必要とされる.
球磨型軽巡洋艦
球磨型軽巡洋艦とは1920年代に3500トン級天龍型を拡大強化した近代型高速巡洋艦として建造された5500トン級軽巡洋艦である.
第二次世界大戦時は艦歴20年超えの旧式艦であったが,36ノット(時速約67km)と高速であったことから様々な作戦に参加した.
日本海軍の5500トン級軽巡洋艦は 14隻あるが戦艦プラモデル(艦船模型)界ではほとんど知られていないマイナーな軍艦.
しかし,ゲーム「艦これ」の影響で認知度が急上昇し,プラモデル界でも注目されるようになった.
1番艦(ネームシップ):球磨(くま)について
5隻建造された球磨型軽巡洋艦の1番艦であるネームシップ.
佐世保海軍工廠で建造されたため甲板のリノリウムが縦貼りという特徴を持つ.(一般的な軍艦は横貼り)
建造当時は雨水除去装置の開発が発展途上であったため,先端の膨らんだ煙突となっている.
後にコンパクトな雨水除去装置が開発され戦艦から駆逐艦に至る様々な軍艦に採用されたが,球磨だけ改修されず旧式のままだったので見分ける際の大きな特徴となっている.
2番艦:多摩(たま)について
球磨型軽巡洋艦の2番艦で1921年に長崎造船所で竣工 .
建造中に水上偵察機を搭載することが決定されたが,実際に運用すると回収時に艦を停止させる必要があり,戦闘では使い勝手がとても悪かった.後に撤去されている.
最後の戦闘であるエンガノ岬沖海戦では,戦闘中の損傷による速度低下により小沢艦隊から置き去りにされてしまい,単艦で離脱をはかるも米潜水艦の雷撃により撃沈された.
また,置き去りにされていたことから救助もなく乗員全員が戦死という悲惨な最後を迎えている.
多摩は過去に模型界で入念なリサーチが行われており,資料が多い軽巡洋艦である.
北方作戦時の迷彩塗装が有名で軽巡洋艦の中では特に人気がある.
以上,要約でした.
球磨と多摩それぞれのキットの違いを解説
姉妹艦である球磨と多摩ですが,所々に違いがあります.
画像は説明書の完成図で上が多摩・下が球磨となっており,比較すると兵装や艦橋,煙突など違いが確認できます.
これは建造当時からの違いではなく,キット化した年代が違うためです.
球磨は建造初期がキット化されたのに対し,多摩は戦没した最終時の姿でキット化されています.
キットのパーツリストを比較すると,共通ランナーはあるものの半分以上のランナーがそれぞれ球磨と多摩専用に別々で用意されています.
ちなみに船体パーツは球磨と多摩で共通に見えますが,実は違うので同時建造する際は間違えないよう注意してください.
軽巡洋艦:球磨(くま)&多摩(たま)の同時組立!
それでは球磨型軽巡洋艦の姉妹である球磨と多摩の違いを比較しながら同時建造していきたいと思います.
船体や甲板・艤装の組立
まず最初は船体パーツに組むパーツをランナーから切り出します.画像がパーツをザっと並べた感じです.
すぐに組みたいところですが,ボーナスパーツを使用する予定の方はここで別の作業が入ります.
(ボーナスパーツ:ディテールアップしたい方向けに用意されたキット付属のパーツ.接着剤が必要)
ドリルによる穴あけ作業(ボーナスパーツを使用する方のみ)
説明書には使用するドリル径がしっかり記載されています.
球磨は0.8mmのみですが,多摩は1.5mmも使用するようです.
筆者愛用のドリルで穴をあけていきます.
ここから組立に戻ります.
↓
細いパーツにもダボがついており,接着剤なしで問題なく組めました.
また,別パーツ化による色分けの細かさが驚異的です.
リノリウム甲板を組んだところで問題発生.
画像のように細い支柱パーツが船体の側面に干渉して隙間が発生しています.
実はこれ,筆者が「船体パーツは球磨と多摩で共通なんだ」と勘違いしたことにより発生した問題でした.
2隻並べて比較した画像です.
船体側面部分が長いのが球磨,短いのが多摩です.
筆者は逆に組んでいたようです.
この後全て分解し組み直しています.
リノリウム甲板パーツ全てを組んだ様子です.
パーツの合い,色分け共に素晴らしいです.
特に接着剤なしでほとんどストレスなく全てのパーツが組めたのは驚きでした.
接着剤不要のスナップフィットとは言ってもやはり艦船模型.
画像のように細かい艤装パーツがたくさん登場します.
一番小さいパーツがこれです.(筆者の人差し指の上)
こんな小さいパーツも接着剤なしで組めます.
このサイズになると指というよりも爪で組むことになるので,慣れていないと上手く組めず時間もかかるしストレスもたまります.
ピンセットは用意した方がいいかと思います.
リノリウム甲板に艤装パーツを組んだ状態です.甲板の色分けやディテールがより細かくなり見応えが出てきました.
それではここで,球磨と多摩の状態を比較してみましょう.
パッと見は大差なく,艦首側に至ってはほとんどが同じです.
ただ,よく見ると艦尾側のリノリウム甲板形状が大きく異なっているのが確認できます.左右対称に近い感じです.
この部分も球磨と多摩を見分ける際のポイントとなりそうですね.
煙突の蒸気捨て管(煙突側面の細いパイプ類)が別パーツ化されたことで精密度が高くなり,素組でも十分な完成度になっています.
球磨の特徴である先の膨らんだ煙突形状も見事に再現されています.
14cm砲は砲身と楯が別パーツ化された組立式です.
パーツの合いがとても良く,防水布の塗り分けもやり易いと思います.
カッターボート類は全て付属のシールで色分けします.
ピンセットや爪楊枝で押し付ければパーツ形状にしっかり馴染んでくれます.
煙突や兵装,カッターボートを船体に組みました.
この段階で無塗装とは思えないほどの見栄えになっています.
これは完成が楽しみですq(^-^q)
艦橋や搭載機・後部マストの組立
艦橋と後部マストを組立します.
画像は組立に使用する全パーツです.
パーツ精度がとても高く,バリ処理や干渉部修正といった煩わしい作業が一切必要なかったので組立はとてもスムーズでした.
後部マストのディテールと完成度も素晴らしいです.
九四式二号水上偵察機
次に組むのは球磨に搭載する九四式二号水上偵察機です.
3パーツで構成され,もちろん接着剤なしで組むことが可能です.
完成度が高いうえ,組立もお手軽です.
付属のシールも良い感じです.
球磨本体に組んだ様子です.
ディテールが細かいので艦船模型としての見栄えUPに大きく貢献しています.
ちなみに多摩はカタパルトを撤去した後期仕様をキット化しているので,搭載機は付属しません.
球磨の艦橋マスト組立
球磨の艦橋マストを組みます.
かなり細かいパーツが多く,折れやすい部分もあるので取扱注意です.
接着剤なしで組めるがゆえにダボ穴へ押し込んだ際破損する可能性が高いです.(筆者が実際に破損させています)
折れにくい部位を掴んで押し込みましょう.
球磨の艦橋マストの組立完了です.
艦船模型の組立においては,このマストの垂直水平を出すのに苦労するのですが,艦NEXTの球磨はパーツ精度が高いので普通に組んでも水平垂直が出ました.素晴らしい!
多摩の艦橋マスト組立
多摩キットは近代化改装した後期仕様を再現しているため,21号対空電探や22号電探,射撃指揮装置がマストに装備されています.
これらのパーツはかなり小さく,破損や紛失など取扱に注意が必要です.
電探や射撃式装置などディテールの細かいパーツが増えたことで見応えのあるマストが完成しました.
多摩の特徴である傾斜した頭頂部のマストもしっかり再現されています.
スクリュー組立
艦底パーツにスクリューパーツを組みます.
精度が高いので問題なく組めますが,スクリュー軸はかなり細くとても折れやすいです.
軸に力が加わらないよう注意して組みましょう.
パーツは細いですが,より実艦に近いスケールで再現されているため見栄えは素晴らしいです!
船体と艦底を合体させれば,フルハルの球磨と多摩が姿を現します.
ボーナスパーツを使用しない方はこれにて完成となります.
ボーナスパーツの組立
ボーナスパーツを使用する予定の方はこちらもぜひご覧下さい.
前半の工程で穴開けしたリノリウム甲板パーツにボーナスパーツを組んでいきます.
ボーナスパーツは通風筒や双眼鏡,単装機銃などのパーツですが,画像のように恐ろしく小さいです.
ピンセットや接着剤が必須で非常に細かい作業となるため,あくまでも精密に作り込みたい上級者向けのパーツとなっています.
正直肉眼だと気づきにくい部分を作り込むことになるので,自己満足パーツとも言えます.
双眼鏡は主に艦橋内部へ接着します.
天井を組むとほとんど見えなくなるのが少し残念です(*_*)
機銃や通風筒もこんな感じで接着していきます.
軽巡洋艦:球磨(くま)と多摩(たま) 完成!
膨らんだ煙突と搭載機が魅力的な球磨(くま)
まずは球磨型軽巡洋艦のネームシップ:球磨(くま)の完成した様子を見ていきましょう.
艦首は菊花紋章や舷外電路,錨などのディテールがとても素晴らしいです.
カッターボートのシールは違和感もなく,色分けのアクセントになっており見栄えに大きく貢献しています.
球磨キットに付属する九四式二号水上偵察機は完成度が高く,艦船模型としての見栄えがかなり良いです.
甲板の軍艦色とリノリウム色が別パーツ化で完璧に色分けされている点は本当に素晴らしいです.
塗装派にとってもかなり嬉しいパーツ分割なのではないのでしょうか.
また,艦尾の一号連携機雷用軌条先端まで再現されている点もGOODです!
フルハルの魅力であるスクリュー部は驚異的な細さで再現され見栄え抜群.
組立の難度以外は文句なしです.
舷側中央部の装甲板厚やリベットの立体形状は拡大写真で見るとその凄さが良く分かります.
ここまで再現された艦船模型を筆者は製作したことがありません.恐るべしフジミ模型.
対空砲火が大幅強化された最終時の多摩(たま)
次は球磨型軽巡洋艦の2番艦:多摩(たま)の完成品を見ていきます.
艦首フェアリーダーやキャプスタン,鎖などしっかり再現されている点が見事です.
昭和19年10月の捷一号作戦時である最後の姿をキット化しているため,球磨のキットにはなかった電探類や射撃式装置が目を引きます.
球磨のリノリウム甲板が縦張りなのに対して多摩は横張りですが,その部分もしっかり再現されています.
また,対空兵器が増設されているので,多摩の甲板は艤装がミッチリでディテールが細かく見応えがあります.
カタパルトを撤去し増設された機銃や,14cm主砲を撤去し12.7cm連装高角砲に換装した点は多摩キットの大きな特徴です.
対空兵装だらけの印象を受けますが,筆者的にはその方がとてもカッコいいです!(^^)!
艦尾もギリギリまで単装機銃が配置されています.
対空兵装が多いことにより,組立工数は球磨と比較して多摩の方が多くなっています.しかし,それに見合うだけの細かいディテールと見栄えUP効果は期待できます.
戦艦に劣らないほどのディテールと見応えのある多摩完成品でした.
球磨と多摩の完成品を比較
斜め上から見た感じだとぱっと見で分かる違いは,
- カッターボートの数
- 搭載機の有無
でしょうか.
あとは球磨の方が甲板がスッキリしているようにも感じます.
姉妹間でも艦橋に違いがあるというのは軍艦アルアル話ですが,やはり球磨と多摩でも細かい部分に違いが確認できます.
組立は細かい部品の少ない球磨の方が簡単でした.
球磨と多摩を見分ける際の大きなポイントである煙突です.手前が球磨で奥のちょっとピンボケしたのが多摩です.
球磨の先端が膨らんだ煙突形状がしっかりと確認できます.
搭載機のある球磨と機銃に置き換えられた多摩,ここは違いが大きい部分です.
また,多摩はカタパルト下の主砲や後部マストのクレーンなども撤去されていますね.
艦尾も並べてみると結構違いが目立ちます.
多摩のこれでもかとミッチリ配置された対空兵装が魅力的です.
全体を俯瞰してみるとあまり違いがないように感じた球磨と多摩でしたが,姉妹を並べて細かく見ていくとかなり違いがありました.
どちらのキットを選ぶか判断する際の参考にしていただければと思います.
艦NEXT:球磨(くま)型軽巡洋艦の姉妹を同時製作レビュー!まとめ
艦NEXTシリーズ新商品の軽巡洋艦:球磨&多摩を同時建造レビューしました.
率直な感想としては艦NEXTシリーズ中かなり組み易いキットだと感じました.ダボとダボ穴のはめ合いが改善されており,接着剤無しでもほとんどストレスなく組めました.
そして新要素であるリノリウム甲板の別パーツ化については組立易さ&パーツの合い,色分け共に素晴らしく,この方式は「今後のラインナップにもぜひ採用していただきたい!」と思うほどです.
また,ボーナスパーツを使用した場合,素組とは思えないほど精密で見応えのある完成度になります.この辺は期待通りでさすが艦NEXTといったところです.
軽巡洋艦なので戦艦や空母と比べ完成後の大きさはコンパクトでパーツ数も少ないですが,それゆえに小さいパーツや細いパーツも多い印象でした.
ピンセットを持っていない・使ったことがない初心者の方にとっては少し組立で苦戦する部分があるかと思います.
ただ,甲板の色分けがほぼ完璧であり部品点数も戦艦ほど多くない点から,初心者の方の入門キットとして選択しても問題のないキットでしょう.
完成後は満足のいく仕上がりになること間違いなしです.
筆者的には手軽に製作できて5,500t級軽巡洋艦の魅力を感じることが出来る良いキットでとても満足です!(^^)!
以上,艦NEXT:球磨型軽巡洋艦姉妹を同時製作レビューでした.
塗装不要で製作可能な艦船模型に興味がある方は以下の記事も参考になるかと思います.
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